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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)7028号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕本件考案の構成要件は、

(イ) 薬剤容器の口金に破壊針を貫通して設けたる螺子蓋を螺合し、

(ロ) 口金より高圧ガスボンベを収容せる筒を薬剤容器内に挿入して設け、

(ハ) 破壊針と高圧ガスボンベとにコイルバネを介在させ、

(ニ) 筒には薬剤容器の下部に達するパイプを連結し、

(ホ) 別にノズルより薬剤容器の下部にパイプを垂下させた

(ヘ) 加圧式粉末消火器の構造

であると認められる。この認定に反する証拠はない。

被告は、登録請求の範囲の項に記載されかつその作用効果について明細書中実用新案の説明の項に記載のある事項のみが、考案の要部であるとの見解にもとづき、本件考案の要旨は、右要件のうち(ハ)の部分のみであるとし、これを限定的に解釈すべき旨主張するけれども、考案の技術的範囲は、明細書の登録請求の範囲の項の記載にもとづいて定むべく、登録請求範囲の項の記載のうち、明細書中実用新案の説明の項にその作用効果が明示的に記載されてある部分のみをもつて考案の要旨となすべきものでないことは、実用新案の説明ないし考案の詳細な説明の項には、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができる程度に、その考案の目的、構成および効果を記載し、もつて、考案の内容を正確かつ適切に公開すべく、ここに記載される効果については、当該考案によつて生じた特有の効果を記載すれば足り、その考案の奏する一般的効果についてまで記載する必要がないことによつても明らかである。したがつて、被告の右主張は、理由がない。

また、被告は予備的に、本件考案の要件は、実用新案の説明および図面からみて、……制限的なものである旨主張するが、登録実用新案権の技術的範囲は前記のとおり登録請求の範囲の項の記載にもとづいて定むべきであり、明細書中実用新案の説明および図面は、登録請求の範囲項が出願人において実用新案権として保護を求める考案の技術的範囲を明示した部分であるのに対し、前述のとおり、考案の内容を公開する役割を果たす部分であり、登録請求の範囲の記載事項の意義を明確にするためのものであるに過ぎないから、被告主張のように解すべき理由はない。

<中略>

(損害賠償請求)

被告が被告製品を次のとおり製造、販売したことは、当事者間に争いがない。

昭和四二年八月 七、〇五〇本

同年九月 一七、〇〇〇本

同年一一月 一四、五〇〇本

同年一二月 一三、五〇〇本

昭和四三年二月 四、六〇〇本

同年三月 四、〇〇〇本

同年五月 六、〇〇〇本

同年六月 一三、〇〇〇本

同年八月 五、〇〇〇本

ところで、<証拠>によると、被告は、被告製品の型式番号たる「四二―二〇」の消火器について日本消防検定協会に対し、次のとおり検定の申請をしていることが認められる。

昭和四三年四月 一、二〇〇本

同年七月 一〇、〇〇〇本

同年一〇月 一〇、〇〇〇本

同年一一月 一〇、〇〇〇本

同年一二月 三、〇〇〇本

消防法(昭和二三年法第一八六号)によれば、消防用機械器具等については、日本消防検定協会に型式承認および個別承認の申請をしなくてはならず、個別検定に合格しても、型式承認を受けかつ個別検定に合格したものである旨の表示を附したものでなければ販売しまたは販売の目的で陳列してはならないことになつており、加圧式粉末消火器が右消防用機械器具等にあたることは、消防法施行令(昭和三六年政令第三七号)第三七条第一号により規定されている。したがつて、特段の事情の認められない限り、日本消防検定協会に対する申請本数をもつて、右申請当時頃における被告の被告製品の製造販売台数と認めるのが相当であるところ、<証拠>によると、被告は、昭和四三年九月以後は、被告製品の製造を中止していることが認められる。ただし、同証言中、昭和四三年八月以前の製造販売台数に関するもののうち、日本消防検定協会宛申請数と異なる部分は、たやすく措信できない。したがつて、被告は、被告製品を昭和四三年四月には一、二〇〇本、同年七月には一〇、〇〇〇本(このうち七、〇〇〇本を製造販売したことについては、当事者間に争いがない。)を製造販売したものと認めるのが相当である。

また、昭和四二年一〇月分および昭和四三年一月分については、右検定のための申請数を認むべき証拠がないから、被告において右各月において製造販売したことを自認する限度において、昭和四二年一〇月には一九、二〇〇本、昭和四三年一月には九、六〇〇本をもつて被告製品の製造販売数とする。

ところで、被告製品の工場渡し価格が原告主張のごとく一本一、八〇〇円であると認めるに足る証拠はなく、かえつて、証人Sの証言によると、一、一〇〇円であることが認められる。そして、本件考案の実施料率は、原告本人尋問の結果および<書証>ならびに弁論の全趣旨によれば、右工場渡し価格の三%をもつて相当とすべきものと認められるので、結局別紙計算書のとおり工場渡し価格に製造販売台数を乗じ、さらにこれに三%を乗じて得た金三、六一八、四五〇円と金四九五、〇〇〇円の合計をもつて、本件考案の実施料相当額とし、これを原告が被告より受けた損害の額として、その賠償を請求しうべきものというべきである。

以上のとおり、本件賠償請求のうち、昭和四二年八月から昭和四三年六月までの損害として金三、六一八、四五〇円にこれに対する最終の不法行為の日の後であることの明らかな昭和四三年七月二日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分および昭和四三年七月から昭和四四年二月までの間において生じた損害として金四九五、〇〇〇円とこれに対する右と同様に昭和四四年六月一七日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は、正当として認容することとし、その余は失当として棄却すべきものである。(荒木秀一 宇井正一 牧野利秋)

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